人のいない夜明け前のオフィス街を歩いていた。
突然「何か来る」という直観を覚えた。
追い付かれる前に逃げなくては。スーツなので手足が上手く動かないがとにかく必死で走った。
少し開けたところにアンテナのついた電波塔のようなビルがある。
開いた自動ドアから入り螺旋階段を駆け上がった。
階段の終わりは屋上だった。見下ろすとビルの下に何匹かの熊がいてあたりを嗅ぎまわっている。
まさかここまでは上ってこないだろう、そう思いながらも膝が震えるのを感じた。
東の空がだんだん白んでくる。日の出が近い。